【はたらくをかんがえる】最期の時間を支えるしごと

はたらくを考える水曜日です

仕事帰りに待ち合わせ。オープンしたては人が多いなぁ。

今回インタビューをしたのは、看護職の方。
私の実妹です。

 彼女は、今ターミナルケアに携わっています。
ターミナルケアとは、一般的に余命わずかになってしまった人へ行うケアのことを指します。
終末期医療とか終末期看護とか呼ばれることもありますね。
彼女の職場は、末期がんの方が家で最期を迎えるための訪問看護をしているところなのです。

ターミナルケアがやりたい人はもちろんいると思います。
私が「なぜ君はその仕事に?」と思う理由は、彼女が以前はがん治療の最前線で治験に携わっていたからなのです。
治すための最前線で働いていた人が、治す事を目的としない現場へ。
これまでの自分がやってきたことを覆すような職場を選んだ理由は何なのか。
そしてなぜがんなのか?
家族だからこそ、なかなか話す機会がないのでここで聞いてみたいと思いました。
そして、当番明けでお腹が空いている彼女とご飯を食べながらのインタビューとなりました。

治すことだけが選択肢ではない

草間彌生ワールドが広がっております。

ー 早速ですが、学生の頃からがんの治療に携わりたいと思っていたの?

「いや、そんなことはないよ。
学生の頃はコレをやりたい!みたいなことあんまり考えてなくて。
勉強出来る環境が良いなとは思っていたので最初の職場は大学病院に行ったのよね。
配属になった科に、がんの患者さんが多かったので学ぶ機会が多かったことがきっかけ。
自分が小さい時に父ががんの手術してたし、親戚もがんで亡くなった人が多かったから、死につながる身近な病気っていうイメージがあったのもあるかな。
だから、治療の最前線で勉強したいと思って転職した。

転職時の面接で、勉強をしたいという意志を伝えていたから
治験の病棟に配属してもらえて、様々な臓器のがん治療に携わることができたの。
研究会やら勉強会やら行かせてもらって、あの時期はホントめっちゃ勉強させてもらった。
職場の人も、熱い志をもった人が多くてチーム力も高かったし。
今でもその人達とは仲良くさせてもらってる。」

ー それだけやりがいのある仕事だったのに、なんで辞めたの?

「うーん。言葉を選ぶのが難しいな。
がんの治療って一般的と言われている治療法以外にも、開発されている薬や治療法って100近くあって、いわば戦うためのカードはそれだけあるわけ。
でも、そのカードが何のがんに対して、いつ使うのが有効かってことがわからないカードだったりするから、それをはっきりとさせる役割が治験なのよね。

治験に協力してくださる患者さんの多くは、一般的なカードで戦ってきたものの、効果がなくて別のカードを手にするために、地方からでもやってくるの。

もちろん、選択した薬が効いて劇的に良くなる人もいるけれど、そういう人だけじゃなくて「この治療法は、効果がありませんでした」という結果になる人もいるのね。
治療って体力を奪われるから、治療をすることで状態が悪くなる人も中にはいらして。
「効果がありませんでした」という結果を持って退院して1週間もしないうちに亡くなった方もいらしたの。

良くなる人もいるし、治験によって薬の使い方や効果がわかれば救える命があるし、大切なことなのよ。
医療は進化していっていて、医療で救える範囲を広げる仕事をしているけれど、でも実際医療の限界ってあるんだなと思って。
そこから先輩とかと話す中で、終末期の看護をやってみたいと思うようになったかな。それで今は、病院じゃなくて家で最期を迎えたい人のために訪問で緩和ケアを行うセンターで働いてる。」

どう残りを生きるか、どう最期を迎えるかを支える

ありえねぎし!な美味さの牛タンです。

ー 「最期は家の畳の上で家族に囲まれて…」ってよく聞くやん。
病院じゃなくて家を希望される方って多そうよね。

「病院の方が機材とか整っているし、24時間医療従事者がいるから、その方が安心って人もいるよね。でもこの病気は年齢関係なく発症するからね。若い人で、自分の子どもがまだ小さいから病院だと一緒に過ごせないので家で過ごしたいっていう人もいる。一般的に畳の上でーとかは関係なく、一人ひとり状況は違うし、選択する理由もそれぞれだよ。

訪問看護を始める前に、先生と面談を行うのだけど、先生は「あなたの余命は1ヶ月です」とか伝えるの。
「絶対」ではもちろんないけれど、これまで診てきた人達と照らし合わせると期限はこのくらいと。
実際1ヶ月と伝えた人が1ヶ月で亡くなるってわけじゃないよ。実際何年も訪問している家庭もあるし。けど逆に1週間行かなかったところもある。
残された時間を理解して悔いのないように何をするのか考えていきましょうって意味で必ず伝えていることなのよね。
でもさ、うすうす治らないかもしれないって思っているとしても、命の期限を伝えられてすぐに受け止められるかって言われたら、どう?」

ー 「そうですか。はっきり言ってもらえてよかった」って…すぐには言えないかもしれないな…。怖くなるかな。いや、どうやろうわからんね。

「そうよね。そんな簡単に受け止められるものじゃないよ。
実際に自分が余命わずかの状態にならないとわからないし、バックグラウンドがどんな状況かによっても受け止め方は違うだろうし。

なんで神様でもないあなたに決められるのか
なんでそんなこと言われなくちゃいけないの!
って思う人だっているよ。

残された時間がわずかだから家がいいって思う日もあれば、やっぱり治療がまだできるんじゃないかって病院を希望する日もあるし。

家を選択したことで、
「こんな時間を過ごせると思ってなかった。家族に囲まれて穏やかな時間が過ごせて幸せです。」
とおっしゃる方もいらっしゃるけど、そうじゃない人ももちろんいる。

自分の死と向き合うって一筋縄ではいかないし、一般的ってものはない。
患者さんを支える家族や周りの人達にしても同じだよね。日々葛藤してるよ。

一人ひとりのそういう葛藤もまるごと受け止めて行かないといけない。」

ー なんか医療というよりは、福祉に近いかんじがするね。

「そうかもしれないね。痛みを軽減するために薬を使う必要があるし、日々医療的判断が必要とされるから「介護」じゃなくて「看護」だけど。
後は、治療としてやっていることが意味のないことだったり、本人の残りの時間を短くしてしまうことであれば「治療を止める」という決断を促すことも必要で。
まだ治るかもしれないという希望をもって、そのカードを握っている人にカードを捨てないといけないというのは希望を捨てろと言っているのに近いから難しいよね。
でも知識がないと判断って出来ないわけで、医学的知識がある私たちが伝えないといけない。
わかってるけど、苦しい部分だよね。」

人の葛藤や最期と向き合う仕事。そのやりがいとは

治るかもしれないという希望を捨てる選択を迫ることもあるという、体力的にも精神的にも重い仕事。
自分が治らないがんだったら、自分の最期をどう迎えたいのか、話しながら「幸せとは?」という哲学的な問いが頭の中をグルグルしていました。

そして仕事の内容を聞けば聞くほど、
「仕事を続けていられる理由とはなんだろう。やりがいって何なんだろう。」
という疑問が深くなりました。
ということで、次回は最期を支える仕事のやりがいについて聞いていきたいと思います。そう、これは前編で後編があるということなのです。長くなったからね。
それではまた来週。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
 

新卒採用をはじめるならディーレクトにご相談ください

新卒採用に踏み出せない人事担当者の方、 そのお悩み、ディーレクトが解決します!