【はたらくをかんがえる】コメディーで生きていく

コメディーを生業にする

前回のお話がとってもとってもシリアスだったので、今回は真逆の、コメディをお仕事にしている人に話を聞きに行きました。お話を聞くのはヤノミさん。
ヤノミさんは「小心ズ」という名前でコメディーパフォーマンスを行っています。

私がヤノミさんの舞台を初めて観たのが約10年前。
無言劇をベースに、スキャットによる歌と踊り、笑えるのだけれども美しい世界がひろがる舞台に魅了されました。
日本国内にとどまらず、アメリカ、カナダ、シンガポールなど海外での活動も行っており、各国で数多くの賞やスタンディングオベーションを獲得しています。アーティストとしての活動以外にも、結婚式の司会などを行いながら生活しています。

『アーティストとして生きていく』

そういう生き方に憧れ、選択したものの挫折したり諦めたりして別の道に進む人も少なくない世界です。10年以上アーティストとして活躍しているヤノミさんの生き方と仕事観、作品に対する想いについて聞いてみたい。そう思い、酒とサブカルの聖地、新橋と高円寺でお話を伺いました。

ラベルのつけられないパフォーマー

—ヤノミさんのパフォーマンスって、パントマイムのようでそうじゃないし、ピエロのようでそうでもないし、観たことない人に説明するのが難しい作品ですよね。

「ベースが無言劇だからパントマイムでしょ?って誤解されることもあるけど、パントマイムではないんですよ。パントマイムというのは大変な技術で、それを生涯かけてやっている友人たちもたくさんいるので、ほんのわずかでも「パントマイム」と名乗ってはいけないと思っております。白塗りだからってピエロってわけでもないもの。海外いろんなところに行くけれど各国のパフォーマーから「観たことない!」って言われることが多くて。 パフォーマーを探して色んな人達を観てきているはずのシルクドソレイユのスカウトマンからも「見たことないスタイル」って言われたんですよね。フィジカルコメディーっていう言い方が一番フィットするかなー。 って言いながら今はスタンダップコメディもやってるし説明難しいですね。」

—そう!パフォーマンスだけじゃなくて、ヤノミさんって何をしている人なの?って聞かれたときも、なんて言っていいのか困る。

「そうよねー。私でさえ答えるの難しいって思いますもん。何と表現していいかわからないから売れないよねー笑。 「パントマイムやってます!」とか「俳優です!」って名乗れるとやれることが分かりやすくて声かけやすいけど、何だかわからないと声かけづらい。 それでもいろんな表現をしていきたいから、自分の枠をつくってしまうようなラベルみたいなものは付けたくないんですよね。おかげで売れないけどw」

—見ないとわかんないからまず見てって動画見せたりしますよ。
「ねー。良い時代になったよねー。」

演劇からパフォーマンスの世界へ

—今のようなスタイルでパフォーマンスをし始めたきっかけとかあるんですか?

「初めは演劇をやりたいと思っていて、劇団(流山児★事務所)に所属していたんですね。そこで演じることや裏方のことまで色々と勉強して。 そんなこんなやってる時に知り合いの演出家から、バーで芝居をするからって声をかけてもらったんです。
今ではカフェやバーでイベントしたりお芝居したりって当たり前みたいになってきてるけど、当時は日本でそんなことやってる所なかったのですよ。

海外ではすでにバーやカフェなどで芝居をやることってあって。初めてみたのは、劇団の公演で裏方としてモスクワに行った時。劇場のロビーにあるバーで二人芝居をやってたんですね。ビール片手に寛いだ雰囲気の中で自由にお芝居を楽しんでる様子がすごく新鮮で!普通芝居の公演って劇場で公演して一度やったらおしまい。またやる時は再演という形でやっていますよね?
そのモスクワでみた人達はレパートリーシアターと言って、いつでもやれる演目をいくつもレパートリーとして持っているのです。そんなの日本にはなかったし、いつでもどこでとやろうと思えばできるってすごい衝撃でした。この経験は今でも小心ズのアイディアの一つになっています。

そんなモスクワでの体験があったからバーでやると聞いてやりたい!って、二つ返事して。やってみたらやっぱりすごく楽しいし、もっとやりたいって友達のクロナツを誘ってやることにしたんです。

脚本とか書けないし作りたくないなーっていう気持ちもあり、二人とも好きな歌とダンスを中心にセリフなしの作品にしよう!って決めて。オーナーが外国人だっただけに、バーのお客さんが外国の方が多かったんです。外国の人は日本語だと分からない、日本人は英語だとちょっとわかりづらい、ならば誰もが平等にわかるよう、歌の歌詞もスキャットみたいにしようと思って作りました。
その時は意識してなかったけど、結果ユニバーサルなパフォーマンスになって、海外に持っていきやすいスタイルができあがりましたね。」

—周りにあわせてというか、意図せずしてやったことが良い方向に転んでますね

「ほんと、必要に迫られてーとかしょうがないからこうなったーってことばっかり。 ミスしゃっくりの幸せな一日っていう作品だって、北米5ヶ月ツアーの出発2ヶ月前に、一緒にやってたクロナツが急に辞めることになって期限が決まった中で自分一人でできる作品考えなくちゃ!って思って振り絞って作ったものですもん。」

—期限に迫られすぎている!
「北米ツアーだけは絶対に何がなんでも行きたい!と100%決めていたので。決めたからには作るしかない。 脚本も、小道具も自分で作ってるからまずそれをやらなくちゃいけないですよね。概ね固まったら演目変更しましたーって連絡もしなくちゃいけないし、宣材写真の差し替えもしなきゃいけないし。 今考えても恐ろしい量の仕事を恐ろしいスケジュールで。よくやったよねー私。」

0から1をつくる

—『ミスしゃっくりの幸せな一日』はオーランド、ウィニペグ、バンクーバーなどで賞を獲得して、そんな逼迫した状態で作ったものだとは思えない素晴らしい評価をされてますよね。しかもパロディではないオリジナルの作品。0から1を作ることってそんな簡単に出来ないと思うのですが。創作力ってどうやって身につけてきたんですか?

「劇団での経験が大きいかな。台本にはセリフのある人以外のことは書いてなくて。いわゆるガヤ(群衆)のことはひとつも書いてないのです。
「これどこで出たらいいんですかね?」って聞くと、「自分たちで考えて出て」って言われるんですよ。出たら良いってもんじゃなくて、意味がないといけないし芝居の邪魔になってはいけない。とにかく舞台には出たいから、どこか出られそうなところはないか、どう出たら良いか真剣に考えて。ガヤに稽古時間はないから、役がついている人よりも早く集合して練習して。
ガヤがやりたくて劇団入った人なんていないじゃん。みんなセリフがある役がほしいし、主役になりたいのですね。だからガヤにやる気がないというか、まぁモチベーションが低いですよね。私は、ガヤだってやりようによっては舞台を面白くすることが出来るはずと思ってたから一生懸命考えてやってた。
役付きの人達と集まってやる稽古で、自分たちがここで出ようと考えたシーンの稽古が始まったら「今だ!」って出るんです。そこでOKが出たら本番でも出られるんだけど、NGが出たら出番なし。もう一回考えてきたから見てください!なんてことはできなくて、出番を掴めるチャンスはその1回だけ。
そうやって、ない出番を作ること、1回のチャンスのために必死で考えることを繰り返したことが、自分の創作力を高めてくれたと思います。」

これって演劇界だけではなくて、会社でも一緒だわ

そう思いながら話を聞いていました。
やりたい仕事をさせてもらえず、やりたくない仕事がまわってくることって多々あります。 嫌々とりあえずやる、この仕事にも価値があると懸命に取り組む。頼まれた仕事自体の出来にそこまでの差がでなかったとしても、得られるものが全く違うのです。

やりたくない仕事に、何の価値もないわけではなくて。価値は自分次第でいくらでもつけられるし、高められる。

「やりたいことができない、活躍できない、こんなはずじゃなかった」と嘆くなら、ない出番を作るように活躍できる出番を作り出したらいい。それは目の前にある仕事を懸命にやって結果を残すことで任せられる出番かもしれないし、考えて提案することで得られる出番かもしれない。はたまた場を変える、転職することで得られる出番かもしれない。

嘆いてただ待ってるだけの時間、もったいない。

なんてことを考えてたら長くなってきましたね。続きはまた来週。

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